【将棋】恐るべき魔王の研究力。渡辺棋聖、藤井七段に反撃の1勝。【棋聖戦五番勝負】
渡辺明棋聖に藤井聡太七段が挑戦するヒューリック杯棋聖戦五番勝負。第三局が9日行われ、渡辺明棋聖が挑戦者の藤井聡太七段に勝利。五番勝負は渡辺棋聖の1勝、藤井七段の2勝となりました。
ここまでの経過
棋聖戦の挑戦者が記録とともに藤井七段に決まったのがひと月前。先月8日に行われた一局目は終盤の熱戦の末に藤井七段が勝ち。先月28日に行われた二局目はAI超えと言われる手も飛び出して藤井七段が驚きの完勝。内容のある2連勝で、藤井七段が棋聖獲得に王手。渡辺棋聖にとっては後がない状況で本局を迎えていました。
そして本局は藤井七段の先手番。ストレートでのタイトル奪取もあるかと思われました。
対局場
この日の対局場は東京の都市センターホテル。過去にもタイトル戦が行われている場所ですが、将棋盤にコーヒーがぶちまけられたり、対局中に避難訓練のサイレンが鳴りひびいて中断したりと、ハプニングが続いた場所でもあります。ちなみにどちらも豊島将之現竜王名人が居合わせてました。今回は豊島先生がいなかったので(?)、滞りなく対局が進行しました。
対局内容
藤井七段の先手で、得意戦型の角換わり腰掛銀で始まりました。
両者の研究手順だったようで、どんどん手が進みます。午前中から76手まで進行し、もはや中終盤に入ろうかという早く激しい展開となりました。
午後からは渡辺棋聖が攻め藤井七段が受ける展開。しばらくはまだ研究手順だったのか短考で応対していた藤井七段でしたが、やがて長考に沈むことに。時間差も大きくなり、そのあたりから徐々に渡辺有利に形勢が振れはじめます。
渡辺優勢となっても藤井七段は時間のない中で手を尽くしましたが、渡辺棋聖はたっぷり残っていた時間を投入し、慎重に慎重に手を進めました。
そして142手で渡辺棋聖が勝ちとなり、五番勝負を1勝2敗としました。
感想
谷川先生の感想まとめが素晴らしいので全乗っかりしたいところですが。
棋聖戦第3局。渡辺棋聖の作戦選択、時間の使い方に、この一局にかける思いと綿密な準備を感じました。
— ◇チーム康光 レジェンド◇第3回AbemaTVトーナメント (@TeamYasumitsu) July 9, 2020
苦しくなってからの藤井七段の勝負術と終盤力も流石で、この観点からも、渡辺棋聖が終盤に時間を残しておいたのは大正解でした。
第4局がますます楽しみになりました。
谷川浩司
しかし1、2局目の内容が良かったので、そのまま藤井七段がストレートで行くかとも思いましたが、さすがの渡辺先生ですね。局後のインタビューで作戦勝ちということを言われてましたが、改めて渡辺三冠の事前研究の凄さを感じました。今回の番勝負だけでなく、これからも藤井七段の超えるべき壁兼学ぶべき相手として君臨し続けるのでしょう。
展望
さてこれで渡辺棋聖が1勝を返し、次は渡辺棋聖の先手番。また作戦が上手くハマれば星を五分に戻せる状況です。2局目では後手の藤井七段の積極策に押されましたが、今度は先手番を有利に使えるかどうかがカギでしょうか。
渡辺棋聖が五分に戻すのか、それとも藤井七段が初戴冠となるのか。次局が楽しみです。